『東西冷戦の時代を想う』
私自身は「日本語にのみ堪能」な一庶民ですのでこの言い方は間違いなのかもしれませんが、私にとって「フィガロ」はあくまでイタリア語によるオペラであり、それしか聴いたことがなかった私の耳に、ドイツ語の響きは違和感を覚えてしまうというのが、正直な感想です。
歌唱はそこそこ上手にこなしています。
ただ演出や演技もなにやら硬いものを感じてしまうのです。
セットや衣装もなんというか…非常に質素と言うのでしょうか。簡潔で無駄のないもので…。
でも、しかし、オペラの場合、贅沢とはいわないまでもそれなりの工夫というものがあって良いというのが私の考えです。
「支配者階級」と「庶民」の闘争(知恵比べ)とか言う視点で見るのも結構ですが、結局のところ恋の鞘当を描いたドタバタ喜劇なのです。
(だからこそなのでしょう、この公演に3年先立つグラインドボーンの公演の映像は、もっと溌剌と明るく、観客も出演者も一体となった楽しさが感じられます。画面のこちらに居る私も一緒に笑って楽しむことができますが、本DVDの出演者や観客にはそれが感じられないのです。)
もう1回先入観を取り払って見てみれば違う印象もあるのでしょうが、
そのもう1回に挑戦する気持ちもちょっと今の私にはありません。
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